血管性認知症(vascular dementia)

僕最近気がついたんですよ。悩みの9割は他人との比較から生まれてるんじゃないかって。

なんやなんや、えらい深いテーマをぶっ込んできたで。

血管性認知症(vascular dementia:VaD)とは

血管性認知症の概要

だがしかし、そんな哲学的なもんは別でやれって話や。ここは画像所見について学ぶ場やで。

ってな訳で、今日は血管性認知症についてレクチャーしてくで。

認知症はアルツハイマー型やレビー小体症だけやなくて、血管障害によっても起きるんや。

当然と言えば当然やな。血管障害で認知機能の部分が傷害されると、当然その部分の機能が低下するしな。

一般的に血管障害に関連して出現した認知症の総称を血管性認知症と言うねん。

病因、病態は様々やで。動脈硬化による梗塞の場合もあるし、脳出血の場合もある。

おのずと、基礎疾患を持っている人に多くて、かつ年齢が上がるたびに発症のリスクは上がっていくで。

多発梗塞性認知症については、梗塞巣の容積が認知症発現と相関があると言われてて、梗塞巣が100mlを超えると頻度が増大するらしいな。

脳梗塞原因

NINDAS-AIRENの診断基準

VaDの診断基準には、NINDAS-AIREN(National Institute of Neurological Disorders and Stroke-Association Internationale pour la Recherché et
l’Enseignement en Neurosciences,米国国立神経疾患・脳卒中研究所/国際神経科学研究教育協会)の診断基準があんねん。

  • 認知症状がある
  • MRIやCT上,脳血管障害がある
  • これらの因果関係がある

これらが満たされる事となっとる。

また6つの亜型に分類さててて、詳細は下記の通りや。

NINDAS-AIRENにおける診断基準(臨床亜型分類)
1,多発性梗塞認知症:塞栓症や血栓性の機序による主幹動脈の多発梗塞
2,戦略拠点型梗塞による認知症(strategic single infarct dementia):認知機能に直接関与する部位の限局性病変
3,脳小血管病変性認知症:多発性ラクナ梗塞、Binswanger病、大脳アミロイドアンギオパチー
4,低灌流性血管性認知症:心停止や高度な血圧低下によるびまん性脳虚血や分水嶺領域の虚血
5,出血性認知症:慢性硬膜下血腫、くも膜下出血後遺症、脳出血など
6,その他:その他の要因
血管性認知症分類
認知症診療ガイドライン2017 第14章を参考に作成

ちなみに、戦略拠点破壊型血管紹介性認知症(strategic single infract dementia)は、海馬や乳頭、乳頭視床路、尾状核、角回、視床、視床下部なんかがピンポイントで梗塞、障害される事を指すで。

臨床症状

臨床症状は代表的なものとしては不眠や意欲低下、自発性の低下、感情の起伏が激しくなる、感情障害なんかや。

アルツハイマー病のように徐々に進行していくというよりは、発作が起きる度に段階的に認知機能が低下する「まだら認知症」が特徴的や。

ちなみにまだら認知症は、症状の波がある状態の事を言うんやで。

例えば、朝は計算が出来ていたのに夕方出来なくなるとか、物忘れはあるけど理解力に問題は無かったりする事や。

これも血管障害で脳がダメージを受けてまう事が原因なんや。ダメージの量次第である時は出来てたり出来なくなったりという状態になんねん。

「まだら認知症」や。覚えとき。

Binswanger病/戦略拠点破壊型血管紹介性認知症

他に特徴的なのとしては、血管が細くなって血流低下して白質変性を起こす事で認知症状が起きる疾患を Binswanger病 と言うで。

Binswanger型血管性認知症とも言って、認知症、歩行障害、尿失禁を3主徴とする高血圧の高齢者に見られんねん。

高血圧などで細動脈が低灌流状態になってラクナ梗塞やびまん性白質病変の要因となっていると考えられとる。

大脳白質が広く障害されるのが特徴やで。

特徴
Binswanger型血管性認知症認知症、歩行障害、尿失禁の3主徴
高血圧などが原因で血管が細くなり低灌流状態になる事が原因と言われている

画像所見

血管性認知症の画像所見

画像所見は大まかにいうと、両側性多発性梗塞、多発性ラクナ梗塞、脳室周囲白質病変やな。

硬膜下血腫やくも膜下出血などの出血が原因の場合はそれに準じた画像所見になるで。

当然、CTよりはMRIの方が有効で、特にFLAIRや拡散強調画像、MRAが有効や。

FLAIRで高信号でも、T1WIで抜けを認めなければラクナ梗塞やあらへんから注意やで。

ちなみに、多発性ラクナ梗塞ってのは、15mm以下のラクナ梗塞が基底核や視床、白質などに多発して認知症状を来すのに対して、Binswanger型血管性認知症は大脳皮質に広範囲かつびまん性に異常信号を認めんねん。

Binswanger型血管性認知症はCADASILと所見が似ているから鑑別に注意が必要なんや。

うーん、頭の中で情報が渋滞し始めました。

慌てんでもええ。簡単にまとめておくで。

  1. 優位半球、辺縁系の両側性多発性梗塞
  2. 基底核~視床下部における多発性ラクナ梗塞
  3. 脳室周囲白質病変
  4. 硬膜下血腫やくも膜下出血

こんな感じや。

実際の症例

左右の基底核に陳旧性のラクナ梗塞を認める症例や。認知症状がある事から血管性認知症の診断になった例やで。

頭部MRI-血管性認知症3
左がT2WI、右がFLAIR

次はBinswanger型血管性認知症の例や。80代の女性やで。T2強調やFLAIRで大脳皮質が広範囲に高信号なのが見てとれると思うで。

頭部MRI-血管性認知症2
上段左からDWI、T2WI、下段左からT1WI、FLAIR

鑑別診断のポイント

アルツハイマー型認知症との鑑別

血管性認知症はアルツハイマー型との鑑別が難しいんやけど、認知症状がある、脳血管障害ある、認知症と脳血管障害に因果関係がある、これらが診断のポイントや。NINDAS-AIRENの診断基準でやったな。

因果関係ってのは、脳血管障害が起きた時から3ヶ月以内に認知症状が見られる事を言うんや。

3ヶ月以内ならそれが原因で症状が起きてるだろうって考え方ですね。

後は、画像診断で海馬の萎縮の有無も参考になるで。

アルツハイマー型認知症は下記でも話してるから見てみてーや。

CADASIL

加えて、Binswanger型血管性認知症とCADASILの鑑別も重要やな。

CADASILはcerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathyの頭文字で、若年性遺伝性脳血管性認知症の事や。

CADASILは常染色体優性遺伝で20~40代で片頭痛、40~50代でラクナ梗塞、60代~でうつ、認知症を呈する病気や。

これは若年層の時から両側性の皮質下白質病変と皮質下ラクナを認め、基底核や外包に高信号が出現するんや。

これがBinswanger型血管性認知症の画像所見と似てる事があんねん。

鑑別ポイントはCADASILは遺伝性やから家族歴が重要なのと、外包病変が特徴的や。一般的に側頭葉前極病変を認めて側頭葉前部と前頭葉の白質病変がU-fiberまで及ぶ事がBinswanger型血管性認知症との鑑別ポイントやと言われとるわ。

アルツハイマー型との鑑別は脳血管障害の有無とそれに関連して認知症状が3ヶ月以内に出てるかどうか、

Binswanger型血管性認知症とCADASILの鑑別では外包病変と側頭葉前部病変があるかどうかやな。

下はCADASILの症例や。両側の外包と側頭葉先端部に高信号を認めると思う。

頭部MRI-CADASIL
上段左がT2WI、右側がFLAIR

まとめ

今日は血管性認知症についてレクチャーしたで。VaDは病態や原因も多岐に渡るから内容も盛り沢山やったと思う。その中でもポイントをあげるとすれば次の2つになるかな。

血管性病変発症から3ヶ月以内に認知症状が出現しているのを血管性認知症としている

原因は血管性で梗塞や血流低下、出血などがある

ちなみにやけど、多発梗塞性認知症とBinswanger型血管性認知症、戦略拠点型梗塞による認知症は病変が混在してて区別が難しい事もあるみたいやな。

あとは所見はあっても認知症状が出ていないパターンもあるから注意やで。

・・・なんか嫉妬とか劣等感って、他人と比較してるから生まれるんじゃないのかなって思うんですよ。

まぁ、基本的にはその通りや。

人それぞれで得意な事、不得意な事があるのは分かるよな?

でもそれって別に他人と比較するような事じゃないねん。ここが皆分かってへんねん。

それぞれでええやん。お互いが補間し合えばええやん。それがチームやん。そこを比較するからおかしくなんねんで。

ほな、精進しいやー!

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