脊椎血管腫(vertebral hemangioma)

今日は放射線偉人伝3人目や。ベクレルについて話していくで。ベクレルの正式名はアントワーヌ・アンリ・ベクレルって言うねん。核医学の経験がある人はなじみ深い名前やな。

Wikipediaより

概要は次の通りや。

  • フランスのパリで生まれノーベル物理学賞を受賞し55歳で亡くなる
  • ウランの放射線を発見した人だが、発見までの過程は偶然が重なっている
  • 死因は放射線障害だったと言われている
  • 放射能の単位のBq(ベクレル)はアンリベクレルにちなんでいる
  • キュリー夫妻のラジウム発見のきっかけを作った人
  • 自身はレントゲン博士のX線発見がきっかけ
  • つまりレントゲン博士が全ての始まり

最初のレントゲン博士のX線発見が1895年、ベクレルがウラン鉱石から放射能を発見したのが1896年、キュリー夫妻がラジウム、ポロニウムを発見したのが1898年、ラザフォードがアルファ線ベータ線を発見したのが1898年、ガンマ線がヴィラールによって発見されたのが1900年と、たった5年間で今の放射線診断に使われている放射線が次々と発見されてんねん。

レントゲン博士のとこでも話したけど、X線マニアが大量に発生するって事はそれだけ研究者の分母も多いって事やからこんな発見に繋がったんやろな。

そう考えると、レントゲン博士がいなかったら今の僕らの仕事も存在してなかったのかもしれませんね。

その通りや。っていうか、今の医療水準も存在してるかどうかも怪しいもんや。なんせ手術以外の方法で体内を見る事が出来ひんのやからな。しかも今やその力を利用して癌治療にまで使ってるからな。

脊椎血管腫(vertebral hemangioma)とは

脊椎血管腫の概要

今日は脊椎血管腫についてレクチャーしてこかな。

これも比較的遭遇する頻度はある疾患やろ。自分も見た事あるんちゃうかな?

まず血管腫の概要から話してくで。腫とあるけど、実は腫瘍やなくて血管奇形と考えられてんねん。脊椎血管腫は組織学的には海綿状血管腫と毛細血管性血管腫に大別されるんやで。基本的に無症状や。

概要
血管腫骨血管腫は海綿状血管腫と毛細血管性血管腫に大別される
腫瘍ではなく静脈血管奇形と考えられている
脊椎に好発し胸椎(特にTh3-9)に多い
基本的に無症状だが、稀に骨外伸展や出血、病的骨折で疼痛や神経症状を呈する事がある

そもそも血管腫は何ぞやって話しもしとこか。血管腫は血管が異常増殖や拡張をする事で形成される良性腫瘍やねん。血管の異常増殖やから全身に出来る可能性があるんやで。他の血管腫は乳児血管腫や脳動静脈奇形なんかもそうやな。AVMが脊椎に出来と考えればイメージしやすいかもしれんな。

概要
乳児血管腫別名、イチゴ状血管腫ともいう                
生後数ヶ月で大きく盛り上がった形になる
1歳頃がピークで次第に落ち着いていく
毛細血管腫出生時からの毛細血管が異常に増殖した状態
先天性の血管奇形に分類される
自然に消える事はほとんど無い
海綿状血管腫生まれつき静脈が拡張や腫瘤化した状態
部位や大きさは様々
体表から青く見える事もある
動静脈奇形動脈と静脈が直接繋がった状態
動脈の圧により進行性の経過を辿る
大きくなると痛みや出血の危険性が出てくる

脊椎の解剖

次に解剖や。基本的な脊椎の解剖については次の通りや。これは基本やから大丈夫やろ。

脊椎の解剖

ほんで脊椎の栄養血管についてや。

まず脊椎や脊髄の栄養血管を脊椎動脈って言うんやけど、これは前脊髄動脈と後脊髄動脈があるで。

脊椎動脈は分節動脈と関係あんねんけど、分節動脈は椎骨・鎖骨下動脈、胸腹部大動脈、内腸骨動脈から分枝してるんやで。分節動脈の腹側枝は肋骨、筋を栄養してて、背側枝やと脊椎、髄膜、神経根を栄養してんねん。下のようなイメージやで。

脊椎栄養血管

脊椎血管腫の原因と臨床症状

脊椎血管腫の原因はいまだに解明されてへん。ただ脊椎血管腫の1つである海綿状血管腫は遺伝的要因があるのが分かってんねん。

臨床症状は特にあらへん事も多いで。検査中に偶然発見される事も多いんや。ただ血管腫が破裂したりすると、脊髄内なんかに出血が起こって脊髄の圧迫や水頭症になったりする事もあんねん。脊髄の圧迫は支配領域に応じた症状が出るで。例えば運動障害や膀胱直腸障害なんかや。

治療法としては、カテーテルで塞栓治療術がほとんどやな。他には血管腫摘出術も行われたりするで。

画像所見

脊椎血管腫の画像所見

画像所見についてやで。

単純写真やと椎体に粗な骨梁構造が特徴的やと言われてるわ。病変は椎体だけやなくて、構成成分にも及ぶ事もあるで。CTやと限局した骨濃度低下と内部に粗大化した骨梁を認めるで。これをpolka-dot-appearanceとも言うんや。

MRIやとT1強調とT2強調で高信号やで。T1強調で高信号なのは内部の脂肪成分を見ている為なんや。これが低信号の時は骨腫瘍との鑑別が問題になってくるで。

画像所見
血管腫単純写真では粗な骨梁構造(corduroy appearance)が特徴的
CTでは限局性の骨濃度低下と内部に粗大化骨梁を認める(polka-dot-appearance)
MRIではT1強調、T2強調共に高信号を呈す
T1強調が低信号だったり、T2強調が等信号だったりした場合は骨腫瘍との鑑別が問題になる

実際の症例

実際の症例や。60代女性で背部痛精査でMRIを実施した例や。Th6にT1強調で高信号、T2強調で特に高信号の血管腫を認めると思うで。

胸椎MRI-脊椎血管腫

50代女性でL1に血管腫を認めるで。2症例とも典型的な血管腫のパターンやな。

腰椎MRI-血管腫
左上からT2強調、T2強調、下段左からT2脂肪抑制、T2強調横断像

鑑別診断のポイント

骨内脂肪腫

鑑別診断にはT1強調で高信号を呈するものが挙がるで。骨内脂肪腫なんかがあるな。鑑別が難しい場合もあるんやけど、臨床的には同一として扱っても問題無いらしいで。

まとめ

今日は脊椎血管腫についてレクチャーしたで。ポイントは1つだけや。

椎体内にT1強調とT2強調で高信号を見つけたら血管腫を疑う

基本的にはこれだけでOKや。余裕があったらpolka-dot-appearanceやcorduroy appearanceなんかも調べて覚えておくとええで。今回は適当な画像があらへんかったけど、ネットで調べれば出てくるからな。

血管腫は脊椎だけやなく肝臓や脳血管なんかの全身に出来る可能性があんねん。せやから言葉自体はメジャーやろ。でもメジャーやからこそ、良く知っておかんとな。少なくとも今日のレクチャーで脊椎血管腫については自信を持って診断出来るくらいまでになってくれると嬉しいで。

ほな、精進しいやー!