【臨床症状】40代 男性 交通事故
【問題】画像所見と診断名は?
➡ 横断像(椎間板スライス)
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- L2椎体にT2WIで高信号、T1WIで高信号の病変を認める
- 信号強度から血管腫と考えられた
- またL5の両側に陳旧性の分離所見あり
- その他、ヘルニアや圧迫骨折等の所見なし
- 上記より、L5陳旧性分離、L2血管腫と診断された
【血管腫】
・血管腫(hemangioma)は、血管の異常増殖からなる良性の骨腫瘍で、脊椎腫瘍の中で最も多く見られる
・多発する事がある(30%程度)
・好発部位は胸椎で、通常は無症状で偶然発見される事が多い
・稀に骨折や脊髄圧迫症状をきたす事がある
・各種画像所見は次の通り
参考書籍:エッセンシャル脊椎・脊髄の画像診断
- X-p/CTでは矢状断や冠状断では椎体を縦走する骨梁構造を認める(corduroy cloth appearance)
- また横断像では、限局性の骨濃度低下域と、内部の肥大化した骨梁を認める(polka dot appearance)
- MRIでは、脂肪間質や血管、浮腫などを反映してT1WI、T2WI共に高信号だが、脂肪成分が少ない場合はT1WIで低信号となる事もある
【腰椎分離症】
・関節突起間部に起きた分離のことで、下位腰椎(特に第5腰椎)に好発する
・スポーツや部活動をやっている10代に多く、疲労骨折によるものと考えられている
・75%で両側に発生する
・分離症は病期分類があり、次のように分類される
- 初期・・・骨折線を認める状態
- 進行期・・・骨折部の離開を認めるが硬化は認めない状態
- 終末期・・・完全に分離し硬化を認める状態
・分離症が慢性期(終末期)になると、辷り症に移行することも多く、小学生だと80%の確率で辷り症に移行するとも言われている
・変性による辷り症は脊柱管狭窄を来すが、分離による辷り症は脊柱管の前後径は増大する
・小児における2週間以上の腰痛は分離の可能性が高い
・単純写真でのスコッチテリアの首輪サインが有名
・CTも有効で骨折線や骨硬化も確認できる
・MRIでは骨折そのものの指摘は難しい事があるが、椎体の浮腫性変化がサインになる
・保存療法が基本的な治療法で、進行するほど骨癒合の期間の延長や癒合割合が低下していく
・日常生活に支障が来す場合は、外科的治療も選択されることがある
参考文献:骨軟部疾患の画像診断 第2版