【臨床症状】20代 他院にて頚髄に異常指摘
【問題】画像所見と診断名は?
※ T2WI、T1WI、脂肪抑制の矢状断、T2WIの横断像の順に表示
➡ 造影MRI
※ 矢状断、横断像の順に表示
▶答えはこちら
- 各種矢状断で小脳扁桃の下垂(14mm)を認める
- またTh-6を中心に脊髄の空洞を合併し(造影後の画像で濃染なし)、それより上位の中心管も軽く拡張しており、脊椎空洞症の所見
- これら所見からキアリ奇形Ⅰ型が考えられる
- 他にC6-Th-12の椎体にセグメンテーション不良を認め、Lilppel-Feil症候群も疑われる
【キアリ(Chiari)奇形】
・キアリ奇形とは水頭症を伴う後脳の奇形であり、下記のように分類されている
<キアリ奇形Ⅰ型>
- 小脳扁桃、下部脳幹の下垂
- 中枢神経合併奇形は見られない事が多い
- 脊髄空洞症を50~85%で認める
- 時に水頭症も合併する
- 後頭蓋骨性成分の形成障害が成因の一つと考えられており、後頭蓋窩狭小化、頭蓋底陥入症、斜台平定化などの頭蓋底頸椎移行部の骨異常を認める
- 成人発見例が多い
- めまい、眼振、誤嚥、歩行j障害などが症状で、咳やくしゃみで頭痛が誘発される事が特徴的
<キアリ奇形Ⅱ型>
- アーノルド・キアリ奇形とも言う
- 小脳、下部脳幹の下垂に髄膜瘤、水頭症を全例に伴う事が特徴
- テント上の中枢神経合併奇形も多い
- 脊髄髄膜瘤と水頭症は胎生20週には超音波にて確認できる
- 嚥下障害や呼吸障害が主な症状
<キアリ奇形Ⅲ型>
参考文献:すぐわかる 小児の画像診断 改定第2版
- 第1、2頸椎レベル背側の脳瘤と、同部への小脳と下部脳幹のヘルニアが特徴
- 非常に稀な疾患
- 出生時から呼吸困難、嚥下困難、錐体路徴候、痙攣、発達遅延などがある
【脊髄空洞症】
・脊髄空洞症は脊髄内部に脳脊髄液が貯留し空洞を形成した状態
・キアリ奇形、脊髄損傷、脊髄腫瘍などと関連して生じる事が多い
・感覚障害や疼痛が主な症状だが、無症候性も多い
・MRIでは脊髄内を上下方向に広がる線状~卵円形の嚢胞性病変として描出される
・大きなものでは隔壁を有することもあり、分葉状の形態を示すことも少なくない
参考文献:骨軟部疾患の画像診断 第2版
【Klippel-Feil症候群】
・短頸、低位毛髪線、頚部可動域制限を3徴とする先天性頸椎欠損(癒合)症
・やや女性に多い
・側弯症が70%程度と高度に合併する
・他には、Sprengel奇形や上肢の形成不全、顔面奇形など
・骨格以外では、腎臓奇形、心臓奇形、聴覚障害などがある
岡山大学病院 整形外科 脊椎・脊髄グループを参考に改変