救急35

【臨床症状】70代 腹痛

【問題】画像所見と診断名は?

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➡ 冠状断(造影)

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    ▶答えはこちら
    • 小腸から横行結腸にかけて腸管の拡張と二ボー像を認める
    • 肝彎曲を超えたあたりの横行結腸にCaliber changeを認め、同部位にやや造影される腫瘤性病変を認める
    • ここが閉塞起点となり腸閉塞を起こしているものと考えられた
    • 周囲に目立ったリンパ節腫大はなし
    • 上記より横行結腸癌による腸閉塞と診断される
    • また下部食道に壁肥厚を認めやや濃染を認める箇所あり
    • 食道癌の除外が必要となる
    • 上記より、横行結腸癌による腸閉塞、下部食道癌疑い
    • 他の所見として、右腎結石、嚢胞、副腎のびまん性の腫脹(クッシング症候群疑い)、右肺胸水など
    • 上行結腸を中心に腸管壁内にガスの存在が疑われ腸管気腫症の除外が必要だが、腸管虚血などの所見は認めないため、あっても良性かと考えられた
    左から単純、造影早期(非提示)、造影後期
    • その後、紹介先にて、食道下部腫瘤からadenocarcinoma(tub1>tub2)、横行結腸からadenocarcinoma(tub1-tub2)の診断となる

    【腫瘤性病変による腸閉塞】

    ・大腸癌が腸閉塞を来す割合は10~30%程度と言われている

    ・左側結腸の方が頻度が高い(内腔が狭い、内容物が固いなどの理由がある)

    ・初期の大腸癌は自覚症状が無い事も多く、結腸閉塞を伴うような(漿膜下以深への全周性の浸潤)場合、多くは進行癌の状態の事が多い

    ・閉塞部口側の消化管が拡張すると、消化液の分泌促進と吸収抑制が起き、更に腸管が拡張していく

    ・大腸閉塞例における穿孔の危険因子は、盲腸の最大径が12cm以上、壁内気腫、小腸の未拡張などがある

    ・治療はステントや人工肛門などの減圧処置

    ・根治が見込める場合は、待機的に手術を行うこともある

    参考書籍:すぐ役立つ救急のCT・MRI 改定第2版

    【腸管気腫症】

    ・腸管気腫症は消化管壁内にガスを認める病態の総称

    ・腸管気腫を生じる機序は、腸管粘膜の破綻、透過性の亢進による内圧上昇:機械説と、ガス産生菌が損傷した粘膜から侵入し壁内で気腫を形成する:細菌説の2つがあると言われているが、明確に解明はされていない

    ・臨床像から次の2つに分類される

    1. 致死性腸管気腫:SMA閉塞やNOMIなどによる腸管虚血や壊死などが原因で発生する腸管気腫
    2. 良性腸管気腫:ステロイドや免疫抑制剤の使用歴、糖尿病、抗腫瘍薬の使用などが原因のケース

    ・腸管虚血における気腫を伴った腸管壁は、必ずしも全層壊死に至っておらず保存的に軽快するケースもある

    ・つまり壁内ガスは虚血による障害の早い段階の所見である事が示唆されている

    <各々の画像所見>

    ・致死性腸管気腫の画像所見は次のようなものがあるが、あくまで参考程度

    ・気腫の壁が薄い、層構造の消失、腸間膜の濃度上昇、壁肥厚(3mm以上)など

    ・良性腸管気腫の画像所見は次のようなものがある

    ・気腫の壁が厚い、消化管の層構造が保たれる、内腔の拡張なし、壁に造影効果あり

    参考書籍:すぐ役立つ救急のCT・MRI 改定第2版