さて、今日は腸閉塞や。腸閉塞とイレウスの違いを言うてみぃ。
閉塞機転があるのが腸閉塞、閉塞機転が無いのがイレウス!
もくじ
腸閉塞(bowel obstructiion)とは
腸閉塞の概要
ビンゴや!さすが姉貴やで!こそっとカンニングしたのは見なかった事にしといたるわ。
さて、今回は腸閉塞の中でも絞扼性腸閉塞にあたる内ヘルニアと外ヘルニアをメインにレクチャーしてくで。
まずは絞扼性腸閉塞についてからや。これで全体像をイメージできるようになるんやで。
絞扼性腸閉塞は何らかの原因によって腸管が絞扼して、腸間膜の血流障害や虚血を伴う状態の事やねん。
放置すると腸管が壊死して切除せなアカン状態にまでなるで。さらに放置すると壊死から感染症を起こして腹膜炎にまで至る事もあんねんで。
ちなみに血流障害を伴うものを複雑性ヘルニアとも呼んでるで。
腸管虚血になる原因は色々あるから、次の図で確認しとき。
腸捻転や腸重積についてはこっちで解説してるから見ておいてな。
内ヘルニアと外ヘルニア
ほんで今日の本題、内ヘルニアと外ヘルニアや。
これらの違いは、簡単に言うと外ヘルニアは腸が腹腔外に出てしまう事、内ヘルニアは腸が腹腔内に入り込む事やで。
- 外ヘルニア 腹腔内臓器が腹腔外に脱出した状態(閉鎖孔、大腿、鼠径ヘルニアがこれにあたる)
- 内ヘルニア 正常孔や先天/後天的な要因で臓器が腹腔内に逸脱した状態(ウィンスロー孔ヘルニアなどが該当)
外ヘルニア
次に外ヘルニアの主な種類を見ていこか。メインは閉鎖孔ヘルニア、大腿ヘルニア、鼠径ヘルニアの3つやで。
鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアは更に外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアがあるで。
これは簡単に言うと、腸が出てくる所の違いや。鼠径靱帯の腹側から逸脱してて、下腹壁動静脈の内側からの逸脱が内鼠径ヘルニア、下腹壁動静脈の外側から逸脱しているのが外鼠径ヘルニアや。
閉鎖孔ヘルニア
閉鎖孔ヘルニアは閉鎖動静脈と閉鎖神経を通す閉鎖管から逸脱してんねん。
大腿ヘルニア
大腿ヘルニアは、鼠径靱帯の背側からの逸脱で、大腿静脈と大伏在静脈の内側からや。
他の特徴も含めた簡単な表を乗せておくで。逆に分かりずらかったらすまんやで。
種類 | 逸脱場所 | 特徴 |
---|---|---|
閉鎖孔ヘルニア | 閉鎖動静脈と閉鎖神経を通す閉鎖管 | 頻度が多い |
大腿ヘルニア | 鼠径靱帯の背側&大腿静脈と大伏在状若の内側 | 中年女性に多い |
内鼠径ヘルニア | 鼠径靱帯の腹側&下腹壁動静脈内側 | |
外鼠径ヘルニア | 鼠径靱帯の腹側&下腹壁動静脈外側 | 男児に多い |
ちなみに鼠径靱帯は横断像やと分からへんから冠状断像で見てみるのがええで。結構ハッキリ分かるで。
内ヘルニア
次に絞扼性腸閉塞の2つめの内ヘルニアやけど、これは腹腔内のウィンスロー孔や腹膜や間膜の欠損部から腸管が逸脱する病態や。
ウィンスロー孔は正常構造やけど、他は先天的、後天的要因によって出来た穴に入り込む事で絞扼が起きるで。
内ヘルニアの名称はヘルニアの場所によって命名されるんやけど、全部を覚える必要はあらへんと思うわ。代表的な次のものを覚えておくとええで。
- 傍十二指腸ヘルニア(~50%)
- 傍盲腸ヘルニア(~10%)
- Winslow孔ヘルニア(~10%)
- 腸管膜ヘルニア(~10%)
ちなみに、元々の生理的にある穴に入り込むパターンを網のう孔ヘルニア、後天的に出来た穴に入り込むパターンを腹壁窩ヘルニアとか異常裂孔ヘルニアとか言ったりするで。
他に画像所見として、closed loopとかbeak signとかあるからそっちを優先して覚えて欲しいから、これらは後ほどレクチャーしていくで。
画像所見
腸閉塞の画像所見
次に画像所見についてやな。
虚血があるのかどうかの判断が重要や。それには次のような項目に着目するとええで。
絞扼性腸閉塞の注意するべき画像所見
- 腸管壁内ガスおよび門脈内ガス(壊死を示唆する所見)
- 腸管壁の造影効果の有無(腸管虚血や壊死)
- 単純検査での腸管壁の高吸収の有無
- beak sign
- closed loop sign
- small bowel faces sign
- smaller SMV sign、whirl sign
- 腸管膜脂肪の浸潤像(darty fat sign)
- ヘルニア水
- (大量の)腹水
beak signは腸管の先がくちばし状に細くなっている事や。これがあると閉塞機転の可能性が高いで。
whirl signは腸管がナルト状に渦巻いて見える事や。これらが頭に入ってへんと、実際の画像で指摘出来ひんからな。
small bowel faces signは小腸内に糞便が認められる事や。通常やと小腸は液体成分がほとんどなんやけど、閉塞機転があるとその肛門側で糞便状の所見を認める事があんねん。これも閉塞機転を確認する重要なサインやで。
他にはclosed loop obstructionは腸管が2カ所以上で狭窄して形成されるU字型もしくはC字型の閉鎖腸管の事や。バルーン風船で尻尾とか作る時にクルっと丸めるやん?あれのイメージに近いで。
このclosed loopは構造上、腸管の閉塞部位でbeak signやwhirl signが確認出来る事が多いな。
Closed loopが出来る原因は索状物や内ヘルニア、軸捻転、結節形成なんかがあるで。
結節形成は腸管がぐるぐるっとなって固結びみたくなってしまう事や。
これらは一番最初の原因のとこでイメージ図を貼っておいたやろ。あそこで確認しとき。
読影の順番としては、
- 小腸や大腸の拡張とニボー像の確認
- 閉塞機転を確認し、イレウスか腸閉塞かを判断する
- 腸閉塞ならどのパターンの絞扼性か確認し、腸管の虚血や壊死が疑われる場合は外科へコンサル
こんな感じになると思うで。
腸管の壊死の有無(造影効果)やけど、虚血が高度になると腸管壁の増強効果不良で血清腹水が出てくるわ。
これが壊死になると腸管壁濃染の欠如や単純CTで腸管壁の高吸収、腸管壁浮腫、門脈腸管膜静脈内ガスが認められるで。
実際の症例
70代 男性 下腹部腫瘤精査
ほな、実際の症例を見ていくで。
この症例やと、鼠径靱帯の腹側、下腹壁動静脈の内側からの逸脱や。これは内鼠径ヘルニアやな。
外鼠径ヘルニア
こっちは外鼠径ヘルニアやな。下腹壁動静脈の外側からの逸脱やで。
閉鎖孔ヘルニア
こっちは閉鎖孔ヘルニアや。
参考症例① 腹壁ヘルニア
これは腹壁ヘルニアの例や。参考までにな。
参考症例② whirl signとclosed loop
鑑別診断のポイント
鑑別について
鑑別診断やけど、これは腸管の虚血や壊死がある腸閉塞かどうかを見極める事が重要や。
腸管壁の造影効果の有無や、門脈腸管膜静脈内ガスの有無は腸管壊死を示唆する所見として有効やで。
イレウスや腸閉塞を疑う所見があったら緊急的に対応しなければいけないものなのかどうかの確認が必要なんや。
他には大腸癌で絞扼性腸閉塞になる事も多いからな。大腸癌についてはこっちで確認しておいてくれや。
まとめ
今日のまとめや。イレウスと腸閉塞、その中の絞扼性腸閉塞について話たで。ポイントは3つ。
小腸や大腸の拡張とニボー像を認めたら腸閉塞を疑う
絞扼性腸閉塞では虚血や壊死があるかないかを判断する事が重要
絞扼を示す所見として、beak sign、closed loop sign、small bowel faces signなどがある
こんな感じやな。他にも腸閉塞を来す外ヘルニアは臍ヘルニア、腹壁ヘルニアなんかがあるで。
閉鎖孔ヘルニアは注意して意識しておかんと、CTの撮影範囲外になる事もあるから注意やで。
腸閉塞は放置すると致死的にもなりかねないので注意が必要ですね。
全くもってその通りや。早めに対処すれは嵌頓やloopを解除するだけで済むからな。
ほな、精進しいやー!