上腸間膜動脈閉塞症(superior mesenteric artery occlusion:SMA occlusion)

今日は上腸間膜動脈塞栓症についてやで!

これは見逃すとヤバイやつですね!

上腸間膜動脈閉塞症(superior mesenteric artery occlusion:SMA occlusion)とは

上腸間膜動脈閉塞症の概要

医療従事者のはしくれなら上腸間膜動脈(SMA)くらいは知っとるやろ?

SMAは十二指腸の下部から横行結腸の2/3までと、膵臓を栄養してる超重要な血管や。

つまりここが閉塞すると十二指腸から大腸の一部までと膵臓が虚血になんねん。これは生命維持がかなり難しくなってまうヤツやで。

下大動脈 解剖

SMA閉塞の原因

原因やけどSMA閉塞には2つのパターンがあんねん。「上腸間膜動脈血栓症」と「上腸間膜動脈塞栓症」や。

上腸間膜動脈血栓症(SMA血栓症)

SMA血栓症は、動脈硬化などで上腸間膜動脈起始部が徐々に細くなって閉塞していく状態や。

SMA起始部から2cm以内に血栓が出来る事が多いらしいな。

上腸間膜動脈塞栓症(SMA塞栓症)

一方の塞栓症は、心臓や他の部位からの血栓がSMAに入り込んで途中で塞栓してしまう状態や。

詰まる部位は、起始部から3~8cmの中結腸動脈分枝部のところが多いらしいで。

割合的には塞栓症の方が多くて、塞栓症が7割、血栓症が3割との事や。

時間経過で腸管の虚血が進んで壊死までになると死亡率が55~90%程度と高くなんねん。なかなかの致死率やで。

仮に助かっても腸管が壊死してると切除せなアカンから、中々に大変やで。

臨床症状と治療法

臨床所見

臨床症状としては、腹痛(激痛)や吐き気、嘔吐、腹部膨満感や下血なんかやねんけど、どれも特異的な症状やないねん。

せやから臨床症状だけで診断するのは難しいと言われとる。

治療法

治療は何にせよ早く血流を再開させる事や。初期ならカテーテルで血栓溶解で回復する事も多いで。

だいたい発症から6時間以内なら腸管切除を免れると言われとる。

それ以上やと虚血が進行して腸管が壊死してまうから、切除術が必要になんねん。

つまり治療開始が遅れると、虚血から壊死、穿孔、敗血症といった経過を辿んねんな。

画像所見

上腸間膜動脈閉塞症の画像所見

次に画像所見についてやけど、まずは造影せん事には中々わかりにくいで。

単純CTでも新鮮血栓の場合は高吸収を示す事もあるんやけど、むしろ単純検査で見つかったらラッキーくらいの感じや。

一方で造影すれば血栓が造影不領域として描出されるから分かりやすいんやけど、急性腹症の場合はとりあえず単純検査という施設もあるやろから、そういった面では発見が難しい事もあるかもしれんな。

smaller SMV sign

smaller SMV signというものもあんねん。これはSMA血栓/塞栓症に特異的って訳でもあらへんのやけど、SMA閉塞で静脈還流が減少するためにSMVがSMAよりも細く描出される現象やねん。

ちなみに通常はSMVの方が経が大きいってのも知っておくとええで。

これは動脈壁は強固なのに対して、静脈壁はそれほどでもないからや。血管壁の中膜(平滑筋)が動脈の方が発達しているのが理由や。

だから通常はSMVの経の方が大きいねん。ここにSMAの血栓なんかによる還流障害が起きると、戻ってくる静脈血が少なくなって動脈と静脈経の大きさの逆転現象が起きるという訳や。

NOMIのような非閉塞性腸管虚血みたいな疾患でも確認される所見やから、smaller SMV sign=SMA閉塞って訳やないから注意やで。

その他の画像所見

他の所見としては、単純CTで腸管虚血は高吸収を示すのも知っておいた方がええで。

ただ造影ではマスクされてしまう事もあるから、単純画像と造影検査両方あるのがベストや。

ちなみに虚血に陥っている腸管は造影効果が弱かったり、腸管の壁内にガスや門脈ガスを認めたりする事なんかがあるで。

上腸間膜動脈閉塞症のまとめ

まとめるとこんな感じかな。

  1.  単純CTで新鮮血栓が高吸収に写る事がある
  2.  smaller SMV signの有無のチェック
  3.  腸管虚血の場合は単純CTで高吸収の時がある
  4.  腸管虚血の場合は単純CTで高吸収の時がある
  5.  腸管壁内ガスや門脈ガスを認める時は腸管壊死のサイン

実際の症例

実際の画像や。SMAが閉塞しているのが確認出来ると思うで。

腹部大動脈の造影濃度よりSMAの方が低吸収やろ。

腹部CT 3方向 上腸間膜動脈塞栓
Case courtesy of Abdallah Al Khateeb, Radiopaedia.org

別症例や。SMAから空腸~回腸動脈に分岐する部分の閉塞を認めるで。

腹部CT 上腸間膜動脈塞栓
Case courtesy of Michael P Hartung, Radiopaedia.org

これは腹部大動脈からSMAへ分岐する部分の閉塞(塞栓症)や。

腹部CT画像 上腸管膜塞栓症
Case courtesy of Alex Caple, Radiopaedia.org

鑑別診断のポイント

鑑別診断について

鑑別診断のポイントやけど、腸管の虚血を認める疾患、つまりNOMI(非閉塞性腸管虚血)や絞扼性腸閉塞、孤立性上腸間膜動脈解離なんかがあるで。

特にNOMIはSMAの造影欠損部位があるかどうかで鑑別出来るで。欠損があれば本症、なければNOMI疑いや。

絞扼性はclosed loopなんかで鑑別可能やし、孤立性上腸間膜動脈解離は真腔、偽腔の有無で鑑別可能やと思うとる。

腸や血管が捻られると絞扼性、血管が攣縮するとNOMI、血管が詰まったり細くなるとSMA閉塞という事ですね。

まぁ最初はそんな感じでOKや。

腸閉塞はこっちのレクチャーで確認しておいてくれや。

まとめ

今日はSMA閉塞症についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。

腹痛が主な臨床症状だが特異的ではなく、発見が遅れる事もあり、予後も悪い疾患

画像上でSMAの閉塞をやsmaller SMV signを見逃さないようにする

こんな感じやな。栄養血管の関係上、SMAが閉塞すると膵臓の一部と空腸や回腸のように、虚血になる範囲が広いから致死率が50~90%と高いねん。

せやから早めに診断確定して治療につなげるのが大切や。

ちなみに急性腹症は色々と鑑別診断が必要やねん。理想は全部覚えとく事やけど、違和感っちゅーか、まずは画像上で異常所見を引っかけられるようにするのが大切やと思うわ。まぁこれが一番難しいんやけどな。

詰め込みばかりやと飽きてくるやろから、たまには頭リフレッシュした方が覚えやすくなるで。

ほな、精進しいやー!