今日は上腸間膜動脈塞栓症についてやで!
これは見逃すとヤバイやつですね!
もくじ
上腸間膜動脈閉塞症(superior mesenteric artery occlusion:SMA occlusion)とは
上腸間膜動脈閉塞症の概要
医療従事者のはしくれなら上腸間膜動脈(SMA)くらいは知っとるやろ?
SMAは十二指腸の下部から横行結腸の2/3までと、膵臓を栄養してる超重要な血管や。
つまりここが閉塞すると十二指腸から大腸の一部までと膵臓が虚血になんねん。これは生命維持がかなり難しくなってまうヤツやで。

大きなくくりで急性腸間膜虚血と言って、大きく次の4つに分類されてんねん。
- 上腸間膜動脈(SMA)塞栓症
- SMA血栓症
- NOMI(非閉塞性腸間膜虚血)
- 上腸間膜静脈(SMV)血栓症
前者2つをまとめてSMA閉塞とも言ったりするな。
発生頻度としては、SMA塞栓症(50%)、SMA血栓症(25%)、NOMI(20%)、SMV血栓症(5%)程度となってるで。
高齢者に多いんや。
この疾患は発症から治療開始までの時間がものを言う病気や。
急性閉塞を発症してから3時間経過すると、腸管に重篤な障害が発生し始めると言われとる。そのまま進行すると、腸管壊死、アシドーシス、敗血症からショックにまで至るんや。せやから早めに診断をつけて治療を開始せなアカンねん。
死亡率も60~80%と高い数値やで。
急性腹症の中でも、重症度はかなり高い部類やで。
SMA閉塞の原因
SMA閉塞には2つのパターンがあるのは上で話した通りで、「上腸間膜動脈(SMA)血栓症」と「上腸間膜動脈(SMA)塞栓症」や。
各々原因があるから順に話していくで。
上腸間膜動脈血栓症(SMA血栓症)
SMA血栓症は動脈硬化などで上腸間膜動脈起始部が徐々に細くなって閉塞していく状態や。おのずと高齢者や基礎疾患を持っている人に多いで。
血栓症はSMA起始部から2cm以内に血栓が出来る事が多いらしいな。
上腸間膜動脈塞栓症(SMA塞栓症)
一方の塞栓症は、心臓や他の部位からの血栓がSMAに入り込んで途中で塞栓してしまう状態や。心臓弁膜症や不整脈、腫瘍塞栓などが原因としてあるで。
詰まる部位は、起始部から3~8cmの中結腸動脈分枝部のところが多いらしいで。そのため、空腸や結腸近位側の血流は保たれる事もあるらしいな。
塞栓子がSMAだけやなく、脾動脈や腎動脈にまで飛んで、各々の梗塞を同時に認めるケースもあるで。
臨床症状と治療法
臨床所見
臨床症状としては、腹痛(激痛)や吐き気、嘔吐、腹部膨満感や下血なんかやねんけど、どれも特異的な症状やないねん。
せやから臨床症状だけで診断するのは難しいと言われとる。
治療法
治療は何にせよ早く血流を再開させる事や。早い段階ならカテーテルで血栓溶解で回復する事も多いで。
だいたい発症から6時間以内なら腸管切除を免れると言われとる。それ以上やと虚血が進行して腸管が壊死してまうから、切除術が必要になんねん。
つまり治療開始が遅れると、それだけ壊死、穿孔、敗血症といった可能性が高くなるって事やな。
画像所見
上腸間膜動脈閉塞症の画像所見
次に画像所見についてやけど、まずは造影せん事には中々わかりにくいで。
単純CTでも新鮮血栓の場合は高吸収を示す事もあるんやけど、むしろ単純検査で見つかったらラッキーくらいの感じや。
一方で造影すれば血栓が造影不領域として描出されて分かりやすいんや。
ただ急性腹症の場合はとりあえず単純検査からという施設もあるやろから、そういった面では発見が難しい事もあるかもしれんな。
具体的なCT所見は次のようなものがあるで。
- 単純CTで新鮮血栓が高吸収に写る事がある
- 造影画像での塞栓部分から先の造影不良域
- 腸管壁の肥厚や菲薄化、腸間膜の浮腫や液体貯留
- smaller SMV sign
- 腸管虚血の場合は、単純CTで腸管が高吸収の時がある
- 腸管壁内ガスや門脈ガスを認める時は腸管壊死のサイン
smaller SMV sign
他に参考になる所見として、smaller SMV signというものがあんねん。
通常はSMVの経の方が大きいんやけど、SMA血栓で還流障害が起きると、SMAに流れる動脈血が少なくなんねん。せやから自ずと戻ってくる静脈血も少なくなって動脈と静脈経の大きさの逆転現象が起きるという訳や。
ただSMA血栓/塞栓症に特異的って訳でもなくて、NOMIのような非閉塞性腸管虚血みたいな疾患でも確認される所見やから、smaller SMV sign=SMA閉塞やないから注意やで。
ちなみに通常はSMVの方が経が大きいってのも知っておくとええで。これは動脈壁は強固なのに対して、静脈壁はそれほどでもないからや。血管壁の中膜(平滑筋)が動脈の方が発達しているのが理由や。
その他の画像所見
他の所見としては、単純CTで腸管虚血は高吸収を示すのも知っておいた方がええな。
ただ造影ではマスクされてしまう事もあるから、単純画像と造影検査両方あるのがベストや。
ちなみに虚血に陥っている腸管は造影効果が弱かったり、腸管の壁内にガスや門脈ガスを認めたりする事なんかがあるで。
実際の症例
実際の画像や。SMAが閉塞しているのが確認出来ると思うで。
腹部大動脈の造影濃度よりSMAの方が低吸収やろ。

別症例や。SMAから空腸~回腸動脈に分岐する部分の閉塞を認めるで。

これは腹部大動脈からSMAへ分岐する部分の閉塞(塞栓症)や。

鑑別診断のポイント
鑑別診断について
鑑別診断は、腸管の虚血を認める疾患、つまりNOMI(非閉塞性腸管虚血)や絞扼性腸閉塞、孤立性上腸間膜動脈解離なんかがあるで。
特にNOMIはSMAの造影欠損部位があるかどうかで鑑別出来るで。欠損があれば本症、なければNOMI疑いや。
- NOMI:non-occlusive mesenteric ischemia(非閉塞性腸間膜虚血)
- 動脈や静脈の攣縮による腸間膜虚血や腸管壊死
- 急性腸管虚血の30%程度で、致死率は50%程度
- 心臓血管術後や透析患者に多いと言われている
- その他の危険因子は、高齢、心不全、不整脈、動脈硬化、消化管出血など
- 早期に特異的な症状はなく、重症化後に診断される事が多いため予後不良である事が多い
絞扼性はclosed loopなんかで鑑別可能やし、孤立性上腸間膜動脈解離は真腔、偽腔の有無で鑑別可能やで。
腸や血管が捻られると絞扼性、血管が攣縮するとNOMI、血管が詰まったり細くなるとSMA閉塞という事ですね。
まぁ最初はそんな感じでOKや。
腸閉塞はこっちのレクチャーで確認しておいてくれや。
まとめ
今日はSMA閉塞症についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。
臨床症状が特異的なものではなく、発見が遅れる事もあり予後も悪い
塞栓症と血栓症があり、塞栓症は塞栓子によるもの、血栓症は動脈硬化などの狭窄によるもの
SMAの閉塞やsmaller SMV sign、腸管ガス、腸管壁の高吸収などが主な画像所見
こんな感じやな。SMA栄養範囲が広いから、ここが虚血になると致死率が50~90%と高くなんねん。
せやから早めに診断確定して治療につなげるのが大切や。
ちなみに急性腹症は色々と鑑別診断が必要なんや。理想は全部覚えとく事やけど、違和感っちゅーか、まずは画像上で異常所見を引っかけられるようにするのが大切やと思うわ。まぁこれが一番難しいんやけどな。
一歩一歩着実にや。
ほな、精進しいやー!